断食について

今回は断食について解説します。というのも先日北海道石狩にある「ひびきの丘」にて、5日間気功断食を経験してきましたので、まだ体感が生々しい内に綴ろうと思います。

少し遠回りになりますが、チベット仏教の法王、ダライ・ラマ14世が「世間の人間を見て、最も驚くことはどんなことでしょうか」というインタビューに対してお答えした言葉をご紹介します。

「金を稼ぐために健康を害し、今度は病を治すために、稼いだ金を使う。将来の心配ばかりをして、現在を楽しむことをしない。その結果、人々は現在にも未来にも生きていない。あたかも人生が永遠に続くかのように生きているが、真の意味での人生を全うすることなく死んでいく」(満尾正先生のご著書『食べる投資』より引用)

私もついこの間までこのような生き方だったと思います。しかし折角生まれてきて上記のような人生ってとても切ないですよね。私には、「自分の人生に誇りを持ち、出来事全て自らが創り出しており必然的であることを自覚し、生きているうちに全てに感謝でき、今を全力で喜び楽しみつくし、真の意味で人生を全うしてから死にたい」という欲望があり、またそういう人を一人でも多く増やしたいという心からの願いがあります。そのためには健康はとても大切な要素であり、病気になる前にできることをお伝えしたい。今回の断食・少食など、食との関わり方はその内の一つのテーマになります。

前半は断食の一般的な内容、回を分けて後半は経験してきた「気功断食」正式名称「郭氏総合調整還流工程」についてお伝えしたいと思います。

断食とは本来、一定期間いっさいの食べ物を断つ、すなわち意識的にみずから禁欲をかすことで心身の浄化を実現しようとする宗教の修行法として始まりました。例えば旧約・新約聖書にて宗教的断食の記事は多く、インドにおいてはバラモン教で断食が修行法として行われていました。日本でも密教や修験道の修行として約1200年前、平安朝以降に断食が行われていました。一方精神修養の目的で断食を行っているうちにいろいろな病気が治ることが経験的にわかってきて、インドの伝承医学であるアーユルヴェーダの古典『スシュルタ・サムヒタ』では、断食は自然治癒力を活性化させる術であり、健康を実現して長生きできるとして、3日間の断食などを勧めています。

そのようなルーツもあり断食には宗教的なイメージも強いかと思いますが、動物は自然にやっています。犬や猫でも体調が悪くなると何も食べようとはしません。これは生命進化の過程で遺伝子が獲得した自然治癒力活性化の手段として行っているものです。そして詳細は割愛しますが断食ないし少食の効用は近代になり科学的に研究され、様々な効果が実証されています。

ここで日本における断食療法の推進者であり様々な難治性疾患の治療を行われた甲田光雄先生のご著書『奇跡が起こる』より、断食の効用を転記します。

一 断食は眠っている本来的な力を呼び覚まし、体質を変える

飢餓状態というストレスに対する反発力が、体のしくみを大きく変動させる。この変動させる力、体質を変換する過程が、さまざまな病気、症状を治す力として現れる。例えば断食を行うと脳下垂体からストレスに強く対抗する物質がでることが医学的に証明されている。

二 断食は快感をもたらす

普通に食事をとっていると脳はブドウ糖のみをエネルギー源として使うが、食事を抜くと別の物質がエネルギー源になる。カナダのオーエンス博士の断食中の研究結果では、50%はケトン体(βヒドロキシ酪酸)で、αアミノ窒素、アセト酢酸がそれぞれ10%、ブドウ糖は30%だった。ケトン体をエネルギー源とした脳は、α波をふやし脳下垂体からβエンドルフィンという物質の分泌量が増えることがわかっている。α波はリラックスの脳波で、βエンドルフィンは快感物質と言われている。

三 断食はエネルギーの利用の仕方を変える

断食中は糖質をエネルギーとして利用できないため脂肪を分解してエネルギーとして利用するようになる。そのため体脂肪が減る。

四 断食は宿便を排泄する

断食は老廃物を排泄するがその働きの中で最も期待される効果が宿便の排泄。食べすきによって宿便がだまると、腸マヒがおこり、毒素が体内に吸収され、様々な症状を引き起こす。宿便を排泄し、またため込まないようにする唯一、確実な方法が断食。

五 断食は環境毒素を排泄する

かつて農薬に使用されていた毒物であるBHCは脂肪の中に沈着し、いったん沈着すると何年も排泄されない。しかし研究にて断食をすると尿中に大量のBHCが排泄されることが分かった。現代ではダイオキシンやビスフェノールA(プラスチック容器など)などの多くの環境ホルモンが人間の体をむしばんでいるとされるが、体内の脂肪の中に入った環境ホルモンが断食にて排泄されることが予想される。

六 断食は自己融解を起こす

断食が体にもたらす変化で特筆すべきが自己融解。断食によって一切の栄養分が断たれると、体はどこからか栄養分になるものを探し始める。差し当たって生命維持に必要なもの以外の組織から栄養分をとりいれてエネルギーに差し替える、これを「自己融解」という。体の至る所で起こるが、血管内のアテローム(コレステロールが沈着してできたおかゆ状の塊)が分かりやすい例である。腸の癒着がはがれる、イボなど腫瘍が消失する、癌が縮小するなども自己融解である。※(注釈)ここでいう自己融解はおそらく自己貪食(オートファジー)のことを書いているのではないかと思われます。今回の断食合宿では18時間断食すると自己貪食の働きが活性化すると習いました。自己貪食は血液中の栄養素が少なくなると細胞中のたんぱく質を一度壊して再活用する働きのこと。そのため全身の細胞で若返りが起こるとされています。

七 断食は遺伝子を活性化する

断食をすると眠っている遺伝子を起こすことができる。体細胞である乳腺組織から羊のクローンを作るのに、乳腺細胞を「初期化」するという操作に必要だったのが飢餓状態(栄養を20分の1にする)だった。※(注釈)2000年にマサチューセッツ工科大学のガレンテ教授によって老化を抑える遺伝子であるサーチュイン遺伝子(別名 長寿遺伝子)が発見されました。空腹のときにサーチュイン遺伝子を活性化する酵素が増えるようです。

八 断食はスタミナをつける

半日断食を実行した人はスタミナがつくことに驚く。それも半端ではない。42.195kmのマラソンを完走できるほどのスタミナである。プロレスの力道山は世界選手権の時に、前の晩から断食をしており、当日は朝から夕まで何も食べずにリングに上がった。理由を聞かれた力道山は「食べたら力がでない」だった。

九 断食は免疫を上げる

昔から経験的に知られていたことで、風邪をひいたときに栄養があるものをたくさん食べるよりも、一日何も食べなかったり、重湯だけにしたりした方が早く治る。九州大学の久保知春教授によって、3日間の断食でリンパ球の免疫活性が高まる、白血球が多くなる、免疫に関係する胸腺や副腎の重量が大きくなるなどが確認されている。※(注釈)米国オレゴン健康大学のズーキック博士のアカゲザルの研究では、30%カロリーをカットした低カロリー食のアカゲザルではT細胞の機能や産生能が向上し、逆に炎症物質の産生量が減少することを実験で確かめたそうです。

十 断食は活性酸素を減らす

活性酸素は臓器や組織に障害を与え、癌や動脈硬化、認知症などの様々な病気を引き起こすと考えられている。活性酸素は人体の酸素消費量の約2%から発生するといわれているが、朝食抜きの1日2食(ただし夜食はしない)の場合は、酸素消費量が1日3食の人よりも13%減少するとのデータがある。腫瘍学の小林博さんが著書『ガンの予防』の中で「腹7分のカロリー制限食で活性酸素の産生量が減ることにより癌の予防に役立つ」という新説を紹介している。

以上、十項目を断食の効用として挙げておられました。

また米国カリフォルニアに断食病院を設立し、幾多の難病奇病の患者を救ったハーバード・シェルトン博士は断食により若返り現象が起こるとされています。

具体的には①聴力の回復、②視力の回復、③味覚、嗅覚が鋭くなる、④活力の回復、⑤精神力の回復、⑥体重減少、⑦消化力の促進、⑧顔の小じわの消失、⑨血圧の低下、⑩心臓・循環機能の促進、⑪前立腺肥大の解消、⑫性的機能の若返り。

以上は石原結實先生のご著書『食べない健康法』より引用させていただきました。

5日間断食を終えた実感としては、事実体重は2kg(BMI19.2→18.4)減少。断食2日目頃に倦怠感やだるさ、3日目までは眠気を伴ったものの、おそらく4日目からケトン体代謝に完全に切り替わったのか、活力が湧いてきて、頭も働くようになり心身とも穏やかに過ごしていました。肌も心なしかツヤツヤとしており、4日目に宿便がしっかりと出てお腹がすっきりとしました。断食中に宿便を出すために食べた梨は元々嫌いでしたがとてもおいしく感じ、味覚が鋭くなったと思いました。断食明け1日目の今日もこうして原稿を書くことができています。今回実践した気功断食については後半に続きます。

断食について” に対して1件のコメントがあります。

  1. こんにちは、これはコメントです。
    コメントの承認、編集、削除を始めるにはダッシュボードの「コメント」画面にアクセスしてください。
    コメントのアバターは「Gravatar」から取得されます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です